科学技術の進歩は物の豊かな社会を築きました。しかし、私達の毎日はかえって慌ただしくなり、契約に振り回されるようになりました。ICTの発達は便利さをもたらした一方、人々は逆に孤独を深めているようにみえます。

 近代の自然科学は、現象において対象を自らと切り離し、外から観察・分析することを基本としてきました。しかし、そのような考え方からは、人と人とのつながりは薄れてしまうでしょう。また、この方法で理解が進めば進むほどに、私達は、自らが生きている場である本来の生き生きとした自然から切り離されてしまいました。さらに、愛、喜び、信頼といった見えないことについて、科学はそれらをうまく取り扱う方法を持ち合わせていませんでした。実は「いのち」もその一つです。科学が扱えるのは生命現象であって、「いのち」そのものではないということです。

 今私達に求められていることは、自らと不可分ないのちを自覚することです。人体科学会は「身体」を通していのちを考えていく学会です。いのちの自覚には、自然と直結した身体が大きな役割を果たすのではないでしょうか。

 人体科学会では、様々な分野の研究者、実践者が集い、これまで研究・活動を積み重ねてきました。そして、権威ではなく、創発の「場」としての学会のあり方にチャレンジしています。新しい時代のために、皆様と共に「新たな知」を創造していくことが、私たちの学会の役割と考えています。

人体科学会会長 

 鮎澤聡
(筑波技術大学)